リハモしてみましょう
いよいよ実際にコードのアレンジをする準備が整いました。今回やっていただく方法は、シンプルサブスティチューション(Simple substitution)というものです。これは、基本的にダイアトニックコードの同じ機能のコード同士を交換するっていうアレンジ方法です。いろんなコードアレンジの中で、30%位がこの方法です(体感)。童謡はもちろん、J-POPとかいろんなところで使われていますので、是非マスターしてください。
実際のアレンジ手順は以下の通りです。
1これまでに学んだ原理を理解する
全ての調のダイアトニックコードや、その機能など、時間がかかってもいいので
程度に思い出せるようにしてください。そして必要に応じて、復習をしてみてください。
2曲の調を把握する。するとダイアトニックコードが分かる。
曲の調の把握には、最初は調号を見て判断してよいと思います。ファに#がついてる曲なら、Key Gとかです。
マイナーキーはとりあえず保留です。これは、ピアノの音階を全てマスターしている皆さんなら、わかるはずです。
また、調が分かるとダイアトニックコードがわかります。ですので、その調のダイアトニックコードを、アレンジしたい曲の楽譜に書いてしまいましょう。
これは、きらきら星の曲なのですが、ファとドに#がついている調なのでニ長調(Key D)です。詳細は前に説明しましたので省きますが、ダイアトニックコードもそれぞれ書き出すと上の図のようになります。
3すでに振られているコードをダイアトニックコードの中から探す。
”すでに振られている”というのがポイントです。じゃぁ本当にメロディーだけで、コードが無かったらどうするかっていうと、それはまた別の話しになりますのでこちらをご覧ください。アニソンでもなんでもいいので、メロディーと、すでに振られているコードが重要です。
上の楽譜は、この講座用に自分で書いたので、もちろんダイアトニックコードの中から見つかるはずです。では、ダイアトニックコードの中に無かったらどうしましょう?
実はこのあとにずっと続く講座の中心として「ダイアトニックでないコードを使う」ことを考えます。これがアレンジの醍醐味なのですが、とりあえず今の段階では、極力ダイアトニックの中から見つけて、 見つからなかったら放置しておいてください。
4すでに振られているコードを、同機能のものと交換してみる。
さて、ここからが本格的なピアノアレンジです。自分で見つけたダイアトニックコードには、機能がありましたよね?(TとかSDとかDとか)。これらは、 同じ機能を持つもの同士は交換することが出来ます。別にできるってだけで、交換しないっていう選択ももちろんあります。
茶色の字で書いた部分が実際にアレンジしたコードです。
例えば一小節目のDM7のコードは、同じトニックの機能を持つF#m7に置き換えてあります。他にもトニックの機能を持つものはBm7がありますので、これでもいいです。また、二小節目はGM7で、これはサブドミナントです。ですので、同じ機能を持つEm7で置き換えてあります。こんな調子で、コードをアレンジしていきます。
ピアノアレンジ前とアレンジ後のコードの響きの違いを確認するために、以下のように曲にしてみました。
[演奏例before] [演奏例after]アレンジ前後を聴き比べて、ちょっとした変化はお分かりいただけますでしょうか?
実はこれには原因がありまして、話をわかりやすくするために、1小節にコードを基本的に一つしかいれてないからです。そして、同じ機能のコードの範囲でしか交換していないからです。
確かにそうです。理論的には間違っていません。
しかし、耳で聞いて違和感を感じる(感じなかったらまぁそれでいい)ということは、 何か別の方法を模索する必要があります。
5あれこれ試行錯誤をする。
例えば、以下のページの基本原理で挙げてありますように「任意の場所にコードを入れられる」ということを用いて、1小節あたりのコード数を二つに増やしたりしてもいいです。
また、同機能のコードの交換だけでなく、以下のページの説明にもあったように、ダイアトニックコードのもつ機能を利用して、新たな機能のコードに置き換えてもいいです。
(トニックは何にでも進行、SDはダイアトニックコードに進行、Dはトニックに進行しやすい・・・とか)。
今までに出てきた知識を総動員すると、上のようなアレンジになります。
さっきまでと違って違和感は取り除かれたはずです。1小節目DM7、二小節目の最初のコードGM7はbeforeのものと同じです。コードは任意の場所に追加してよかったので、二小節目にはF#m7(-5)を入れています。これはトニックの機能を持つダイアトニックコード(IIIm7(-5))です。
トニックの次には何のコードが来ても構わないので(耳が許す限り)次のEm7への流れは大丈夫です。
そして、次のA7のコードは、前にずらしました。そして、元のA7があった位置(4小節目の一拍目)に、同じドミナントの機能を持つC#m7(-5)を置き換えました。このように、ダイアトニックコードの中では、 結構自由にあれこれできるんですね。もちろん、一小節目のDM7をサブドミナントで置き換えても構いません。つまりEm7から初めてもいいんです。基本原理にも説明したように「サブドミナントは、ダイアトニックコードにつながりやすい」ですので、次にGM7(ダイアトニック)が来ているのは問題ないんですね。
6補足
何度も書いていますように、コードをどう弾くかについては、言及していません。それは以下のページを見てください。
ピアノのコードの響きが実際どうなるかというのは、現段階ではそんなに効果的に分からないと思います。しかし、 コードをどうピアノで弾くかを気にすること無しに、 紙(=楽譜)と鉛筆さえあれば、上記の手続きを踏むことでコードのアレンジは可能です。耳に頼る部分もありましたけど、これは、コードのアレンジ後の話です。
とりあえずの試作の段階ではコードは机上でアレンジすることができます。同機能のコードの交換なんて、作業です。ダイアトニックコードの把握さえすれば、あとは、同じ機能のコードを見つけて入れ替える・・・さらには、空いてる箇所にトニックを入れて・・・なんてことは、コンピュータでも自動で出来ることです。
今回のダイアトニックコードのアレンジは、ちょっとは作業の域を超えている気もしますが、次以降に出てくるセカンダリードミナントなんて、もっと作業です。
なんで作業にしたいかというと、コードをピアノで弾くことに重点を置きたいからです。コードを変えるということに苦労しすぎてしまうと、実際の伴奏とか、リズムのアレンジまで到達できません。ですので、是非作業ということを実感してみてください。